ドアグリップの本杢加工工程(1) - 突き板貼り

素材に突き板を貼り付ける作業から始めます。ポイントは素材に合った接着剤を選ぶことです。


写真1
W203前期のドアグリップです。
2次曲面なので難易度は高いです。さらに弾力性のあるプラスチックの複合材でできているので、容易に変形します。

変形によってポリエステル樹脂が剥離する恐れがあります。完成後の取り付け時には要注意です。


写真2
写真2はメープルのバールで0.2mm厚の突き板です。裏面に和紙張り加工がされているため、丈夫で扱いやすいです。

希望どおりの突き板を見つけるのは難しいと思います。特にバールの場合は相談ベースで当たっていくしかないかもしれません。
この突き板は松本合板さんから購入しました。純正部品に使われている樹種はローレルですが、残念ながら品切れでした。メープルで代用できるのでは、とのアドバイスをいただき、使ってみることにしました。
杢目が似ていることが重要で、色は着色すれば何とかなるように思います。
とりあえず突板に触れてみるなら、府中家具さんの突板がリーズナブルでおすすめです。

写真3
まず、コピー紙などで型紙を作ります。突き板は紙と同様に伸びませんので、2次曲面に貼ると必ずシワができます。紙を使って、実際にシワをどのように寄せるかシミュレーションしておきます。
形が決まったら、周囲に1cmほど余裕をもたせて突き板を切ります。
なお、シワが寄る部分に、あらかじめ切り込みを入れたりはしていません。

写真4
素材に接着剤が付きやすいよう、240番のサンドペーパーで表面を荒らしておきます。もう後戻りできないと覚悟しましょう(笑)。

補足:ミッチャクロン・マルチを塗っておくと接着剤の付きが良くなるようです。

写真5
さて接着剤ですが、これも選択が難しいものです。何種類か試してみましたが、初期接着力がないと曲面を貼るのは困難でした。初期接着力といえばゴム系の接着剤が定番です(もっと適した接着剤があるかもしれません)。
今回は「スーパーGライト」という業務用の接着剤を使用しました。一般に販売されている「ボンドG17」を多少ゆるくした感じです。

写真6
突き板を1時間ほど水に浸すと柔らかくなります。伸びるわけではありませんが、曲面への追従性が良くなります。また、乾燥すると結構縮みますので、軽いたるみなら取れてしまいます。
広い面積に貼る場合には、縮みによる反りや割れに注意したほうがよいでしょう。
突き板の接着面の水気をよく拭きとってから、双方の面に接着剤を塗ります。べたつかなくなるまで、5分ほど乾燥させてから貼り付けます。

写真7
貼り付ける前に小技をひとつ。
曲面が多いので少しずつシワを寄せながら貼っていきますが、気を取られている間に他の面が誤って貼り付いたりします。そこで、後回しにする部分にクッキングシートを巻いておきます。これで貼り付く心配がありません。
右側の太い部分から貼りつけます。まず背の部分を貼り、徐々に外側に向かって貼り付けていきます。型紙でシミュレーションした位置にシワが寄るようにします。

写真8
浮いた部分ができないように、しっかりとシワを左右から追い込んでいきます。
もし、接着力が弱くて浮いてしまう場合には、とりあえずそのままにしておき、あとで修正します(写真10参照)。
かなりの曲面ですが、1つのシワに寄せることができました。
突き板が乾いてきて作業しにくくなったら、スポンジ等で水分を補給します。

写真9
クッキングシートを取り除いて残りの部分を貼っていきます。こちら側は曲率が小さいのでシワを3箇所に分散させました。中央に重点的に寄せることで他の2箇所のシワを小さくすることができます。
曲面がきつい場所では接着剤が剥がれてくるかもしれません。そのときは、瞬間接着剤を使ってエッジの部分を貼り付けます。
突き板は乾くと縮んでピンと張りますので、無理に中央部分まで接着する必要はありません。エッジさえしっかりと接着されていれば大丈夫です。

写真10
突き板が乾燥してパリパリになったら、エッジに沿って余分な部分を切り落としていきます。ゴム系接着剤は2・3日経つとかなり硬化するようです。
シワの部分もカッターで切り取っていきますが、削り過ぎないように注意します。もし接着不良で浮いてしまっている場合は、部分的に水で濡らして柔らかくしておき、瞬間接着剤で貼り付けます。
なお、重ね合わせの段差ができてしまってもOKです。ポリエステルの分厚い塗装でわからなくなりますから。

写真11
こちらにできたシワも切り取ります。
みっともない仕上がりになっていますが… こんな感じになったとしても、濃い色で仕上げるなら、ほとんど目立たなくなります。

薄い色の場合には、ほぼそのまま見えてしまうことになりますので、この段階でいかにきれいに仕上げるかが勝負どころでしょう。

写真12
曲面形状(凹面など)によっては写真12のように突き板が破れてしまうことがありますが、そんなときは…

写真13
破れた部分を一回り大きく切り取ります。
端材から似たような杢目の部分を探し、切り出して形を合わせます。

写真14
瞬間接着剤で貼り付けて完成です。
バールのようにランダムな模様だと、目立たなくするのが簡単で助かります。
小さい割れならウッドパテを使ってもいいでしょう。

写真15
最後に、エッジが確実に接着されていることを確認します。爪で引っぱってみて剥がれないかチェックします。
浮いてしまう部分には瞬間接着剤を流し込んで圧着します。

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